宇宙空間に人間を派遣しているあるアメリカ政府機関が、必要なサイズの宇宙服を用意できないという理由から、3月29日に予定していたNASA初となる女性宇宙飛行士2人だけによる船外活動を中止することになった。本来であれば2着必要だった女性用のスペーススーツが1着しかなく、今回、船外活動を行う予定だった女性宇宙飛行士のアン・マッククレインは、ほかの男性飛行士に機会を譲らなければいけなくなってしまったのだ。
マッククレインは自身の体に最適なMサイズではなくLサイズを着用して、すでに1度目の宇宙遊泳を行なっていたが、今回のミッションを遂行するためには、やはりMサイズでなければいけないと判断。マッククレインとペアを組む予定だったもう一人の女性飛行士、クリスティーナ・コッホは、やむなくほかの男性飛行士と作業にあたった。
NASAのスポークスウーマンであるステファニー・シーアホルツは、「アンはMサイズとLサイズの両方で訓練を行っていたが、やはり今回はMサイズが最適だという決断を下した」と発表。このコメントが報道されるや否や、世界中の女性たちがソーシャルメディアを通して、正確な数学と科学の上に成り立っているはずの機関にあるまじき失態、と苛立ちを露わにした。ヒラリー・クリントンもその一人。彼女はツイッターで「もう一着作りなさいよ」と吐き捨てるようにコメントした。
一体全体、NASAはなにをやっていたのだろう。アメリカ人宇宙飛行士として初めて、地球を周回する軌道を飛行した英雄ジョン・グレンを宇宙に送り出した3人のアフリカ系アメリカ人女性を描いた映画『ドリーム』(2016年)を観たことがないのだろうか。前出のシーアホルツは、計画を変更したことへの世論の反発を受けて、「今回の場合は宇宙飛行士を(女性から男性に)交代させた方が、新たにMサイズのスペーススーツを用意するよりもずっと手軽で迅速だったため、そう決断した」と、なんともお粗末な弁解コメントを発表している。
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